スタジオジブリが製作し、1997年に公開されたアニメ映画「もののけ姫」。
宮崎駿監督の代表作の一つで、現在でも高い人気を誇る作品です。
もののけ姫の物語を彩るキャラクターの一人がエボシ御前。
タタラ場の女性リーダーで、モロと敵対し、シシ神の森を切り開こうとします。
今回の記事ではエボシの正体や過去、目的について解説していきますね。
是非最後までお付き合いください!
目次
「もののけ姫」エボシ御前の正体と過去
1997年3月「もののけ姫」制作発表記者会見の中で宮﨑駿監督は次のように語りました。「男と女の力関係のようなものは、江戸時代に作られた関係がいつの時代でも同じだと思い込んでいるところがあるんですけれども、室町時代の女たちはもっと自由でかっこいいですよ」続く👉 pic.twitter.com/bm8pXd25o3
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タタラ集団を率いる女性リーダー
エボシ御前は、タタラ場のリーダーを務めている女性です。
作中では、「エボシ」とだけ呼ばれていましたね。
エボシは妙齢の美女でありながら、タタラ衆を見事にまとめ上げるリーダーシップの持ち主。
タタラ場の生活をよくするために、シシ神の森を切り開き、より多くの鉄を作り出そうとします。
結果、シシ神の森を守ろうとするモロの君やサンたちと敵対するのです。
ちなみに「タタラ衆」とは、たたら製鉄を行う人たちのこと。
たたら製鉄は古代から近代にかけて行われていた製鉄方法で、「もののけ姫」の作中でも描かれていたように、ふいごで空気を送り込んで製鉄を行うのが特徴です。
たたら製鉄には、大量の木炭が必要。
エボシはたたら製鉄に必要な木炭を確保するために、シシ神の森の木を切ろうとしていたんですね。
売られた女性やハンセン病患者に手を差し伸べるやさしい女性
エボシは作中で、金で売られた女性やハンセン病の患者を保護し、タタラ場に住まわせていました。
このやさしさがエボシの本質の一つなのでしょうね。
もののけ姫で描かれているのは室町時代。
庶民の生活は決して豊かではなく、誰もが生きていくのに必死にならなくてはいけない時代です。
そんな時代に、弱いものを守ろうとするのは決して楽なことではありません。
エボシがやさしい人物だということがよくわかります。
ちなみにハンセン病というのは、らい菌によって引き起こされる病気で、別名は「らい病」。
手足のまひや皮膚のただれを起こし、顔などが変形してしまうという後遺症が残ることもある病気です。
もののけ姫の作中では、石火矢を作っていた人たちがハンセン病の患者ですね。
ハンセン病患者は、ただれた皮膚などが気味悪がられ、迫害を受けてきた歴史があります。
歴史上の人物だと、戦国時代の武将の大谷吉継が有名でしょうか。。
健常な男たちを平気で犠牲にする冷酷さも併せ持つ
「ゴジラ」をご覧いただきありがとうございます。来週は2週連続、夏はジブリの第一弾「もののけ姫」を放送します。荒ぶる神々と人間の戦いを描いた、宮崎駿監督の魂の大作。お楽しみに。#kinro #夏はジブリ #もののけ姫 pic.twitter.com/IqoP916S4v
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弱いものを守ろうとするやさしさと同時に、謙譲な男なら平気で見殺しにする冷酷さを併せ持つのもエボシの特徴。
作中では、逃げ切れなかった男性を平気で見捨てていましたね。
私たちの感覚だと冷酷非道な判断に見えてしまいますが、彼らが生きているのは室町時代。
やさしいだけの人間では、組織を守りきることなどできない時代です。
やさしさと理想を見失わず、同時に非情な判断も素早くできる。
それこそが、エボシという人物が持つ類まれなリーダーシップへとつながっているのでしょうね。
海外に売られ倭寇の頭目の妻になった過去
エボシ御前には金で売られた過去があります。
エボシ御前を買い取った人物は倭寇の頭目で、エボシはその妻として生きていたのです。
エボシはタタラ場で、金で売られた女性を保護していましたが、彼女たちに昔の自分の姿を重ねてみていたのかもしれませんね。
ちなみに倭寇というのは、室町時代ごろの日本で活動していた海賊のこと。
中国(明王朝)との交易船を襲ったり、中国との密輸入などを行っていたようです。
夫を殺し石火矢の技術を手に入れ日本へ
エボシ「賢(さか)しらにわずかな不運を見せびらかすな。その右腕、切り落としてやろう!!」#もののけ姫 #金曜ロードショー pic.twitter.com/RDSUodtH03
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倭寇の頭目の妻だったエボシは、夫を裏切って殺し日本へと渡ってきます。
石火矢(鉄砲)の製造技術は倭寇から手に入れたようですね。
作中で石火矢の存在がタタラ衆の強みになっていたように、この時代の日本では鉄砲の製造技術は貴重です。
日本への鉄砲伝来は1543年の種子島とされていますが、これはあくまで公的な記録。
民間レベルでは、倭寇などの間で鉄砲伝来以前から使用されていたといわれています。
つまりエボシが倭寇から手に入れた技術は、当時の日本の最先端なのです。
モデルは立烏帽子
エボシ御前にはモデルが存在します。
それが立烏帽子(たてえぼし)。
鈴鹿山に住んでいたという盗賊で、後世には鈴鹿御前と同一視されるようになります。
鈴鹿御前は、鈴鹿姫・鈴鹿権現・鈴鹿大明神とも呼ばれる鈴鹿山に住む伝説上の女神。
伝承によって語られている姿は違いますが、一番有名なのは坂上田村麻呂の妻だったというお話ですね。
坂上田村麻呂は最初の征夷大将軍で、蝦夷討伐を行った人物。
つまりエボシのモデルになった存在は、蝦夷の生き残りであるアシタカとも因縁があるわけですね。
サンの母親という説もあり
最後までご覧頂きありがとうございました🙌
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エボシはサンの母親なのではないか、という説もあります。
たしかに、エボシとサンは見た目や性格などに共通点がありますね。
ですが、個人的には根拠が薄いような気がします。
むしろ宮崎駿監督は、エボシとサンをよく似た人物に描くことで、サンがあくまでも人間なのだと強調しているのではないでしょうか。
エボシ御前の目的
「もののけ姫」制作にあたって宮﨑駿監督が書いたエボシの設定のメモには、こんな記述があります。
“海外に売られ、倭寇の頭目の妻となり、頭角を現し、ついに頭目を殺し、その金品を持って自分の故郷に戻ってきた”
こんな過去を生き抜いてきたからこそ、今の勇ましいエボシがいるんですね😌。👉続く pic.twitter.com/UcKNFybaQd— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) July 21, 2023
理想の国家を作ることが目的と考察
エボシの目的は、女性や弱者が虐げられない理想の国家を作ることだと考えられます。
そのためにタタラ場を大きくし、より強大な力を持つ組織にして、外部から干渉されないようにしたかったんですね。
しかし急ぎすぎて、神を敵に回してしまうわけです。
映画のラストでやり直しを誓う
エボシ「みんなはじめからやり直しだ。ここをいい村にしよう」#もののけ姫 #金曜ロードショー pic.twitter.com/482xCC5i4N
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映画のラストで、エボシは「みんなで改めてやり直しだ。ここを良い村にしよう」と言っていました。
おそらくエボシは、自分が急ぎすぎたせいで、神と敵対してしまったことを悔いていたのではないでしょうか。
作中でのエボシとモロは、相容れず激しく敵対してしまいました。
ですが、エボシとモロは敵同士として憎しみをぶつけ合いながらも、お互いを認め合っているように見えます。
少なくともエボシは、ジコ坊やその背後にいるずるがしこい人間よりも、モロの方が好ましいと感じていたようですし。
エボシはサンとアシタカの姿を見て、自分とモロも同じように分かり合えたのかもしれない、と感じた。
だからこそ「やり直そう」という言葉が出てきたのだと思います。
まとめ
(エボシ)みな、よく見とどけよ
神ゴロシがいかなるものか#金ロー #もののけ姫 #エボシ #シシ神 pic.twitter.com/uFu3O9eF6b— アンク@金曜ロードショー公式 (@kinro_ntv) October 26, 2018
今回の記事では、エボシの正体と過去、目的について解説しました。
- エボシは強いリーダーシップを持つタタラ場のリーダー
- やさしさと冷酷さを併せ持っている
- 海外に売られ、倭寇の頭目の妻だった過去がある
- エボシの目的は理想の国家を作ることだったが、急ぎすぎていた自分を反省し、みんなでやり直そうと誓った
エボシ御前は「もののけ姫」の物語において、「人間」が理想を求める姿を体現した存在です。
物語を見ると、その姿はとてもカッコイイですよね。
最後までお読みいただきありがとうございました!