伊井圭さん推理小説「啄木鳥探偵處」(きつつきたんていどころ)。
この記事では第四話「逢魔が刻」(おうまがとき)を取り上げます。
2020年4月放送開始のアニメでもこのエピソードは取り上げられると思われます。
この話では成田屋の生後約10ヶ月の男の子が誘拐されます。
子どもを拐かした犯人は誰なのでしょうか?
また誘拐された他の子どもは2,3日で帰ってきたのに、成田屋の子どもだけが2ヶ月も帰ってこないのはなぜなぜなのでしょうか?
原作小説をもとにネタバレ解説します。
さらに飴細工職人の橋本光吉が殺された理由や死んだ時に牡丹の花札を持っていた理由も解説します。
なお原作小説とアニメでは設定や内容が違う可能性があります。
目次
啄木鳥探偵處(きつつきたんていどころ)「逢魔が刻」成田屋の子どもを誘拐した犯人は誰?
犯人はおちょう
「逢魔が刻」で成田屋の子ども・市松を誘拐したのはおちょうです。
おちょうは成田屋の主人・成田嘉平がかつて囲っていた女性です。
成田は自分の妻に子どもができたことを知ると、おちょうに金を渡し無理やり縁を切ったと言われています。
おちょうは成田に縁を切られた後、花見の季節に上野の森でアメ細工を売っているところを目撃されています。
そのときおちょうのお腹は大きく、妊娠しているようでした。
石川啄木の探偵業の助手をしている金田一京助が調べた情報によると、アメ屋(飴職人)と暮らしているとのことでした。
ただおちょうのお腹の子が成田の子なのか、アメ屋の子なのか、金田一の調査ではわかりませんでした。
犬の飼い主は犯人ではない
犯人と思われる人物から金参百円を要求する脅迫状が成田屋に届きます。
脅迫状が入った巾着に金を入れて、成田屋の丁稚が犯人が指定した場所に立っていると、犬が巾着をくわえて持っていってしまいます。
犬は黒マントの男に合流しますが、金田一に取り押さえられます。
黒マントの男は成田屋から金をだまし取ろうとしましたが、子どもを誘拐した犯人ではありません。
井伏昭三という黒マントの男は成田屋の子どもが誘拐されたと聞き、つい金欲しさから脅迫状を送りました。
彼の商売はうまくいっておらず金が必要だったからです。
それにしても井伏はいい考えを思いつきましたね!
巾着に染み込ませた丁子(ちょうじ)の香りを犬に覚えさせ、丁稚が手に持っている巾着を犬に盗ませたのですから。
なかなかのトリックでした!
成田屋の子どもが2ヶ月帰ってこない理由
ここからは犯人の動機に関わる内容の解説です。
誘拐された他の子は2・3日で帰される
「逢魔が刻」では成田屋の市松以外に4人の子どもが誘拐されます。
4人は2才から3才の子で、男女の区別はありません。
4人は誘拐された後2,3日で無事に家に帰されています。
しかし成田屋の市松だけは誘拐されたときに生後10ヶ月で、2ヶ月間も帰ってきませんでした。
これには犯人おちょうの明確な意図がありました。
自分の子どもと成田の子どもを交換するため
おちょうは自分の子どもと成田の子どもを交換するために市松を誘拐しました。
おちょうが産んだ子は成田との間に生まれた子でした。
彼女は子どもを取りかえることで、自分を捨てた成田嘉平に復讐しようとしていました。
ただし子どもを交換するには成田夫妻にバレないよう、できるだけ自然な形で取り替えるする必要があります。
誘拐した時、おちょうの子は満1歳ですでにヨチヨチ歩きをしています。
一方の成田屋の市松は生後10ヶ月で、まだ歩くことができません。
そのためおちょうは市松が歩くようになるまで自分のところに置いておきます。
そして誘拐から2ヶ月後、市松が歩くようになったころに自分が生んだ子を成田屋に返しました。
2人の子どもは父親が同じで、母親が瓜実顔の美人だったので似ていました。
このこともおちょうの犯行に有利に働きました。
最初の4件の誘拐の意味
おちょうは成田屋の前に4件の誘拐をしています。
おちょうの標的はあくまで成田屋であり、4件の犯行はあくまで偽装でした。
最初に誘拐された4人はみな2,3日で無事に戻ってきています。
ならばうちの子もすぐに戻ってくるだろう、と成田に思わせ、警察沙汰にならないようにするのがおちょうの狙いでした。
また最初に誘拐した4人の子どもの家の屋号は「浦田屋」「美濃屋」「原田園」「須藤七兵衛商店」です。
頭文字をとると「浦・美・原・須」、つまり「うらみはらす」。
これに「成田屋」の「成」を加えると「うらみはらすなり=恨み晴らす也」となります。
「恨み晴らす也」には成田屋に対する脅迫の意味が込められていました。
だからおちょうは脅迫状を送らなかったわけです。
飴細工職人の橋本光吉はなぜ殺された?牡丹の花札を持っていた理由についても
橋本光吉が殺された理由
おちょうはいっしょに暮らす飴職人の橋本光吉を殺します。
おちょうは自分の子と成田屋の子を取り替えれさえすればよく、いっしょに暮らす男を殺す必要はありませんでした。
おちょうが橋本を殺したのは橋本が子どものことでのちのち成田屋を強請ろうとしていたから、と啄木は推理します。
橋本はこの事件でおちょうに手を貸していますが、最初から成田屋を強請るつもりでおちょうに協力していていたと思われます。
でもおちょうは成田から金を取るつもりはありませんでした。
金がほしい橋本から邪魔が入ったため、おちょうは橋本を殺した、と啄木は結論づけていました。
橋本が牡丹の花札を持っていた理由
殺された橋本は手に牡丹の花札を持っていました。
これはダイイングメッセージ、つまり誰が犯人かを意味しています。
花札で牡丹と言えば蝶です。
「牡丹に蝶」ですからね。
橋本は蝶、つまりおちょうに殺されたという意味を込めて牡丹の花札を持っていた、と啄木は推理しました。
まとめ
この記事では「啄木鳥探偵處」の「逢魔が刻」の内容を解説しました。
- 成田屋の成田嘉平の子どもを誘拐したのはおきょう
- 犬の飼い主は成田の子どもを誘拐していない
- おきょうは自分が産んだ子と成田の妻が産んだ子を交換するために成田の子を誘拐した
- おきょうは自分を捨てた成田に復讐するために子どもを交換した
- おきょうが成田の子を2ヶ月帰さなかったのは、ヨチヨチ歩きをするまで待ったから
- 最初の4件の誘拐は偽装で、おきょうの標的は成田の子ども
- 橋本は成田を後々強請ろうとしたのでおきょうに殺された
- 牡丹の花札は「牡丹に蝶」、つまりおちょうが犯人であることを意味している
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